“生まぐろの町”那智勝浦では、魚市場で競りを。
“鯨の町”太地では、風情ある漁師町の町並みをたどり、古式捕鯨の史跡を訪ねる。潮風に吹かれて、のんびり歩こう。
名湯が湧く那智勝浦町は、はえ縄漁法による生まぐろの水揚げ量が日本有数の町でもある。それを実感できるのが、生まぐろ市場競り(入札方式)ガイドツアー(要予約)。早朝に競りが行われる勝浦地方卸売市場を、(一社)那智勝浦観光機構の公認ガイドが詳しく案内するもので、ずらりと並んだマグロは圧巻だ。
勝浦駅前のみやげ物店・小倉家では、郷土玩具「熊野古式くじら舟」に注目。江戸時代の捕鯨舟をかたどっており、鳳凰や菊などの模様が鮮やかな色彩で描かれている。店主がひとつずつ彩色しており、予約すれば絵付け体験もできる。
続いては、紀の松島めぐりを楽しみつつ太地へ向かう。紀の松島とは勝浦港周辺に点在する鶴島・兜島・ラクダ岩など大小の島々の総称で、遊覧船が勝浦観光桟橋から出航。基本的なAコースは、太地くじら浜公園に寄港するので、今回はそこで下船。
一帯にはくじらの博物館などの観光施設が集まっている。
公園から南へ歩くと、太地漁港に至る。このあたりが町の中心。漁協向かいの恵比須神社には漁の神が祀られ、鯨骨で造った鳥居が立つ。周辺には住宅が密集した漁師町特有の町並みが残る。他と違うのは、格子を付けた日本家屋であっても、淡い色のペンキで塗った建物が多いこと。かつて太地は北米移民や捕鯨船の乗員を多数輩出。そうした人々がペンキ塗りの文化を海外から持ち帰ったともいわれる。
亀八屋にも立ち寄ったら、洞穴の岩門を見学。門の内側に、古式捕鯨を創始した和田家の広大な屋敷があったと伝わる。さらに絶景の燈明崎を訪ね、続いて梶取崎まで遊歩道をたどろう。高台に続く道は散策にぴったり。ウバメガシなどが緑のトンネルを作り、 随所から海が見える。梶取崎も燈明崎と同じく「山見台」だったところ。岬の突端の日本遺産「梶取崎狼煙場跡」まで行けば、熊野灘の絶景を望める。